表現者たち展は、
①ゲストと対話し(9月)
②対話から受けたインスピレーションをもとに、作品を発表する(11月)、
2本立ての展覧会です。
展覧会では、観客と対話することで、作品を支える「場所」も共に作り出します。
9月 対話の会(ゲスト:安彦良和(「機動戦士ガンダム」原作者・漫画家)※外部非公開
9月~11月 製作期間
11月 展覧会(隅田公園リバーサイドギャラリー)※一般公開、事前予約制、参加型
このオンラインギャラリーでは、11月の展覧会場をお見せしています。
アーティストが安彦氏のどの言葉を、どの様に受け止めたのか、アートの対話をお楽しみください。
◆追憶 ~記憶の中の北海道が交錯する~ 映像作品 前田 圭登(武蔵野美術大学1年生)
安彦良和(「表現者たち展2021 」対話の会においての発言)
『ずっと、本土に対して劣等感があった。大人になってヨーロッパに行ったとき、北海道に似ていると思った。それからは、北海道が世界のグローバルスタンダードなんだと、思うことにした。僕が描く漫画に出てくる原野は、北海道の原野なんだ。』
前田圭登
安彦さんの作品の底流には、北海道の原風景が流れていると思う。でも僕たちがそれに共感できるのは、どこかで見たような、聞いたような風景を、心の奥底で、皆が共有しているからではないか。昔の記憶は、すり切れても、どこか普遍的な形で記憶に沈んでいく。この作品は、だれもが「なつかしい」と感じる、そんな人類に共通の「記憶」を映像にした作品を作りたかった。
作品説明:寄せる波と、波の音を使ったビデオ作品。参加者は、静かにスクリーンの前に座り、映像を見ることによって、自分の中に浮かんでくる記憶と向かい合う。だれもが懐かしいと感じる、普遍的な「昔の記憶」のノスタルジーを形にした。
◆虹の境界 ~音から浮かび上がる人物像~ 音作品 蔭山 翔(サウンドクリエーター)
安彦良和(「表現者たち展2021 」対話の会においての発言)
『(「虹色のトロツキー」のトロツキーが、話しの中で実際には登場しないことについて、)ものは、見方によっていろいろな風に見える。どれが本当だかわからないし、虹はそこに行こうとしても捕まらない。どこまで追いかけても幻のように、行っても行っても、先に行ってしまう。僕はトロツキーを、実在するか分からない、でも憧れとして人の心の中にそれぞれの形で存在する、そんな虹のような存在として描いた。』
蔭山翔
音も、虹と同じように掴むことは出来ず、ましてや見ることも出来ない。しかし、音は姿を変えて我々に多大な影響を与えるのである。
この音作品には、聞いたことのあるだろう音がたくさん入っている。
それは、子供の頃に聞いた音かも知れないし、大人になってから聞いた音かも知れない。
どんな音を聞き取り、どんなイメージをするだろうか。
聞き取った音が実際は違う音であったとしても、それは間違いではないし、また、自分でも予想していなかったイメージが呼び起こされるかも知れない。
記憶のつながりとは、そういうものなのであり、それも含めて、あなたのアイデンティティの一端の表れなのではないだろうか。
作品説明:参加型作品。参加者は、ペアになって音を聞いて、聞こえてきた音をメモする。どんな音が聞こえてきただろうか?見比べてみると、あなたともう1人が聞き取った音は、まったく違っているかも知れない。音と、記憶と、個人のアイデンティティを追求した作品。
◆母恋もの ~漫画ソムリエのうらない館~ パフォーマンス よしだかなえ(主婦)
安彦良和(「表現者たち展2021 」対話の会においての発言)
『僕は、北海道の炭鉱の町の生まれだった。だから、ハングリー精神はあったね。中学生の修学旅行で、初めて本土の青森に行ったとき、衝撃を受けた。本土では、柿が赤くなるんだ、と。北海道では、柿が色づくことはない。大人になってヨーロッパに行ったとき、北海道に似ていると思った。それからは、北海道が世界のグローバルスタンダードなんだと、思うことにした。』
よしだかなえ
本土の柿の木の話を聞いたとき、安彦さんの原風景と、ふるさとを思う心を感じた。私の好きな漫画のジャンルに、「母恋もの」というのがある。安彦漫画の原点は、柿の実の赤に託された母恋ものではないか。満たされない母への思いと、本土への劣等感が、安彦漫画のキャラクターを動かしている原動力なのではないか。
作品説明:この占い館では、あなたの悩みを相談すると、占い師の膨大な漫画知識を駆使して、今のあなたにちょうどいい漫画を紹介してくれる。
◆クリオネ ~「小さきもの」の目線を舞う~ パフォーマンス 小川 猛志(美術家)
安彦良和(「表現者たち展2021 」対話の会においての発言)
『僕は、偉い人を主人公にした漫画を描きたいとは思わないんだよね。ガンダムのアムロも、そのへんにいそうな、しょうもない人間だ。そんな人間をみると、描きたいと思う。愛とか、平和とか、そういう偉そうなものも嘘くさい。』
小川猛志
安彦さんは、愛や平和を嘘くさいと言った。自分は今まで、その反対で、愛や平和を追求してきた。ここでもう一度、身近なところから考えてみよう、と考えたときに、クリオネと出会った。
作品説明:シアター型パフォーマンス。クリオネが海で泳いでいる映像を背景に、クリオネの喜びと哀しみを舞う。
◆戦乙女は月を舞う ~リアルロボット小説~ 小説 茅島 秀人(慶應義塾大学大学院生)
茅島秀人 普段は、IC回路の研究をしている。ガンダムに着想を得て、小説を書いた。
https://ncode.syosetu.com/n9108fo/
◆いつもの自分の作品 ~巨匠との対話は恐れ多い~ オブジェ 堀江信一(アーティスト)
堀江信一
巨匠、安彦良和と対話するなどと言うのは滅相もない。お話は面白く聞かせていただいたが、いつも通りに自分の作品を展示したい。
◆歴史の暮れかた ~認識を記号化して綴る哲学ノート~ オブジェ 鬼丸 康太郎(在野の哲学者)
鬼丸康太郎
安彦氏の漫画に出てくる「お母さん!」という叫びのひとコマが、印象的だった。その叫びを、ラカン派精神分析の「穴」という概念で捉えようとしたときの思考過程を、抽象によって表現した作品。
🌟作品:Projection NO.17 (←リンクをクリック;PDFファイル)
🌟作品についての批評的解説 (←リンクをクリック;PDFファイル)
◆キャラクターが自立する ~体感する詩~ 詩 小川 あい(大学非常勤講師)
安彦良和(「表現者たち展2021 」対話の会においての発言)
「あらすじを考えたことはない。1枚目にキャラクターを描くと、アムロならこんなこと言いそうだな、とか、そんなことが浮かんできて、ひとりでに話が進んでいく。キャラクターが話を勝手に進めていく。だから、自分で描いているようで描いていないようなものだ。」
小川あい
私たちは、他人が存在すると思っている。でも、他人と思っているひとも実は自分なのかも知れない。そして、自分自身も他人なのかも知れない。詩を作るとき、誰が詩を書いているんだろう。この体感する詩は、外部の存在に自分を投影して、自分と他人との間にひとりでに生まれてくる詩を体感してもらうために作った。
作品説明:指示に従って、ブースを回る。
①自分の足の裏から木が生えて来た。そして実がなった。その実を描いてください。
②知らない人達の写真から1人選んで名前をつけてください。あなたの友達です。
③聖書を目をつぶって開いて、開けたところに出てきた文をあなたの友達に読んでください。
④おいてあるジュースを、友人の血だと思って飲み干してください。
⑤もういちど、実の絵を描いてください。最初と比べてください。
■来場者&アーティストコラボ企画
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