建築音響学では、「音」の付く重要な言葉として、
「音・音波・音場」を使い分ける。
「音は空気の疎密波である」
という事は、もちろん物理的には正しいが、
「音」は人間が知覚した時点で「音」になる。
それまでは「音波」なのである。
スペクトル解析を学ぶ際、初期に必ず見るであろう、
関数 f(x) のフーリエ級数の式
![](http://hyogenshatachi.com/wp-content/uploads/2021/08/フーリエ級数の式-300x58.png)
簡単に言えば、
「どんな形の波でも sin, cos というシンプルな波の足し合わせで表すことができる」
というものである。
この事を知った時、とても感動したのを記憶している。
逆をとれば、
「sin, cos というシンプルな波の足し合わせで、どんな形の波も表せる」
という事であり、
「音」に無限の可能性を感じたからだ。
一方で、人間が知覚するという事は、
聴覚系の働きによって脳へ伝達し、「音」として知覚される。
どんな「音」なのかを、自身の持つ経験を活かして、推測する。
また、人は
「両耳間時間差」(「音」が左右の各耳に届く時間差)
により、発生音源の方向を同定するが、
スピーカーによって、音源の位置を調整。
例えば、
夜道を歩いていて、「後ろ」から「人」の声が聞こえた
とする。
ほとんどの人はその「人」を「探す」為に「振り返る」だろう。
そして、思い描いた光景と同じ様な光景を実際に観て安心する。
(探せない場合にはホラー映画のワンシーンのようである)
この「音情報のみから、光景を思い描く」という事が、
今回のアクースマティック作品の目指した所の一つである。
そうして、その思い描いた光景は、
その人の人生・想像力により、固有の作品となるだろう。